2025年10月3日(金) 八千代市市民会館第5会議室
2026年度鑑賞作品決定会議のゲストは荒川雅美さん。「彩花と 私と 図書館と」と題した講演を聴きました。
荒川雅美さんは、ほるぷ出版で長年児童書の販売に携わり、その傍ら、文庫活動にも取り組み、本の貸し出しや読み聞かせ、お話会などを開催されてこられました。ご自分で買い集められた本のコレクションを活用し、勝浦で図書館を開設されていましたが、この度その図書館を閉館されることになり、270冊もの良書を子どもネット八千代に寄付してくださいました。

ここで、「本」、「図書館」、という言葉にピンときた方もおられるかもしれませんが、今回の講演のタイトル「彩花と 私と 図書館と」には、10月26日に開催される劇団風の子「ちぇんじ・図書室のすきまから」に絡めての荒川さんの光るセンスと粋な計らいが込められていました。
講演が始まった序盤、一瞬、荒川さんが言葉に詰まったかのような間がありました。
荒川さんがハンカチで目頭を押さえておられます。
それは子どもネット八千代の40年の歩みを振り返ってくださった時でした。
「40年ってすごいよね。文化環境が様変わりし、幼児が携帯を上手に操る中、今でも変わらず、親子で劇を観るという素晴らしい活動を続けて来られた。親子で参加するというのが素晴らしいシステム。一人で映像を観るのとは違う。」とのお言葉。
長年、荒川さんと親交があった会員は目頭が熱くなったことでしょう。初めて荒川さんのお話を聴いた参加者も、子どもネット八千代と荒川さんとの繋がりの深さを感じ、荒川さんにぐっと引き込まれていきます。

そして今回のタイトルにもある、劇団風の子「ちぇんじ・図書室のすきまから」についてのお話。
荒川さんが劇団のプロモーターでもされているかのように、見どころを解説してくださいました。
後でお聞きしたところ、この作品の内容に感銘を受けた荒川さんですが、実際には作品を観ていないとのこと。
作者の意図が目に見えるかのような分析力、さすがです。
観劇の前に、大人は新たな視点をいただき、観劇がますます楽しみになりました。
また、そこで仰っていたのが「図書館で出会う一冊が、よりよい言葉。」なのだということです。
「本屋さんは本を売るための場所」「図書館の司書は、読んでもらうために本を選ぶ。読んだ時間が無駄にならないような本を選ぶ。」ということをお話しされていました。

荒川さんがテーブルに並べた本の中に、松谷みよ子さんの不朽の名作『いないいないばあ』がありました。
お子さんが赤ちゃんの頃に読み聞かせた方も多いのではないでしょうか。
「これなんか、皆さんご存じでしょう。」と『いないいないばあ』を手に取りながら、あるお話会でのエピソードを話してくださいました。
……そのお話会で、一人のお母さんから「私の母は生まれてすぐに亡くなり、私は母から絵本を読み聞かせてもらったことがありません。荒川さん、今私に読んでください。」と言われたそうです。
そこで荒川さんが『いないいないばあ』を読んで聞かせると、そのお母さんが泣き始め、そして他のお母さん達もどんどん泣き始め、遂に会場は、涙の嵐となったそうです……
その涙の嵐を巻き起こした『いないいないばあ』を、荒川さんが私達にも読み聞かせてくださいました。
あんなに我が子に読み聞かせ、身近にあり何気ないと思っていた絵本に、こんなに心を揺さぶられるなんて😭
一気に目に涙が浮かんできて、そんな本人達もびっくりしたようですが、絵本の終盤には、涙は目からあふれてきていました。
更に…
『ちびゴリラのちびちび』を読んでくださいました。
「大好き。」と繰り返されるちびゴリラへの愛情。
「大きくても小さくてもあなたが大好き。」というメッセージに、遂には涙腺が崩壊してしまった人も😭
我が子がもうすっかり大きなお母さん達でも、あの子が産まれたあの時に、赤ちゃん時代の我が子との日々に、まるでタイムスリップしたかのような気持ちになり、そして今、大人の姿になった我が子に思いを馳せ…心がじわ〜っと温まるようなそんな不思議な感覚を味わいました。


お話の合間には、ユーモアたっぷりの荒川さんのジョークもあり、時々笑顔になれるものの、涙はまだまだ止まりません。
質問の時間、「図書館で絵本を選ぶ時のポイントは?」という質問には、「子どもに選んでもらうことが大事。図書館には、読んで無駄になるような本はないので、安心して選ばせて。」と答えてくださいました。
「例え、年齢相応の本を選ばなくても、それで良い。子どもは揺らぎながら成長していくもの。
今のその子にはまだ難しそうな本でもいいし、逆に赤ちゃんに戻ったような本を選んでもいい。
今よりもっと小さい頃に読んでもらっていた本が、子どもがつらい時に戻っていける場所となることもある。」とのことでした。




その後のスタッフとのランチ会では、「年中の息子は図書館に行くのが大好き。毎回自分の好きな本を楽しそうに選ぶ。でも最近、本の選び方が少し偏ってきている感じがして…」と話すお母さんに、荒川さんは「それは『偏っている』とは言わない。何度も同じ本を借りに来る子がいる。同じページだけを何度も読む子がいる。子どもが開いたページを読むのがいい。それは子どもの時の本の楽しみ方。」と仰っていました。
また、中高生を持つお母さんには、「性にまつわる本はそっと書棚に置いて。実はお互いそれを読んだ、という共通認識があるだけで、話題にする必要はない。」というメッセージをいただきました。
子どもと本との出会い、それがその子どもの人生にどんな影響を与えるのか?親というのは、つい、将来何かの役に立てば、と本を与えようとするものかもしれません。
しかし今日のお話で、目に見える成果以上に大切な、人間が生きていく心の支えに本がなり得るのだ、ということが分かった気がします。
絵本を読み聞かせた時間、読んでもらった時間、それは親子の繋がりを身体に染み込ませていたかけがえのない時間なのかもしれません。
子どもネット八千代が推す芸術体験もまた然り。観劇をして、勉強ができるようになるの?将来役に立つの?いえ、それは分かりません。
しかし、親子で観た劇の感動はずっと心に残るものです。思い出の本のように…。
思い出の劇が心の支えになってくれるのかもしれません。
荒川雅美さん、素敵なお話をありがとうございました!
(広報 浦田)





